Twitter社に対して,写真家がリツイートした者の発信者情報の開示を請求した裁判(事件番号:最高裁判所平成30年(受)第1412号)で,最高裁判所第三小法廷は,Twitter社の上告を棄却し,発信者情報開示を認める判決を出した。写真家が記していた著作権表示がTwitterのシステムの仕様によりリツイートされた際にトリミングされて表示を見ることができなくなってしまったことが,著作者人格権(著作者名表示権)を侵害したと判断したのである。
私は最高裁判所のこの判断は妥当と考える。たとえシステム上の仕様であったとしても,利用上の責任はユーザが負うべきものである。インターネットという誰でも閲覧できる環境へ,他人の著作物を掲載することには大きな責任が伴うことを自覚する必要がある。判決文でも「リツイートを行うに際して,当該画像の出所や著作者名の表示,著作者の同意等に関する確認を経る負担や,権利侵害のリスクに対する心理的負担が一定程度生ずることは否定できないところ」と述べている。その程度のことはしっかり考えて投稿しなさい,ということであろう。
林道晴裁判官が反対意見を述べているが,リツイートにあたって著作権侵害を考慮しなくてもよいという主張ではない。著作権を侵害したのはリツイートした者ではなく,最初のツイートを行った者であり,システムの仕様を決めたのはTwitter社だから,リツイート者は著作権侵害をしていないという主張である。これももっともな意見と思うが,結果的に著作権侵害を行ってしまっている以上,発信者情報の開示程度の責任を課されることはやむをえないと考える。
判決はTwitterに対して,「著作者人格権の保護やツイッター利用者の負担回避という観点はもとより,社会的に重要なインフラとなった情報流通サービスの提供者の社会的責務という観点からも,上告人において,ツイッター利用者に対する周知等の適切な対応をすることが期待される」と,著作権保護を推進するよう注文をつけている。同社の誠意ある対応を期待したい。